2章・めざせ転移門~異世界令嬢は神隠しに会う。

時空間の挾間に立つミニ大師

**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
『 Ouuooon Ouuoun Ouuoooon Ouoon゜゜

゜゜ ゜ ゜

「迷故三界城、悟故十方空、
何処有南北、本来無東西 、」


『 Ouuooon Ouuoun

Ouuoooon Ouoon゜゜
゜ ゜゜ ゜ ゜

海風が吹き荒ぶ
海沿や、崖地の多い巡礼島。

波しぶきかかる
カフカス衛星島 スカイゲート
であり
旧ウーリウ藩島の海底遺構が
眠る海原。

干潮で出現した回廊の一角。

遍路笠を頭に深く被り
金剛杖を手した白装束の
少年が
離れた場所の回廊で、
1人座る
少女を見つめていた。

「ヤオとザードの娘マーシャか」

見た目こそ
エネルギー放出にて
少年に若返りし見た目であっても
彼こそ
マイケルを調整世界に飛ばした
大師である。

読めない表情で
少年大師は佇むみ
呟く。

「先の祝福守護が陣は、なかなか
の出来。ヤオの娘は化けたの」

真っ黒の巻き髪を揺らし
黒き瞳を赤く腫らした
少女は、
学園の制服が汚れるのも
気にせず
サンドイッチをやけ食いしていた

「さて此所が運命軸の交差点。」

そのまま、くるりと
少年が回廊につけた足を軸に
『逆さま』になって
回廊にぶら下がると、

途端に周りは
泡立つ海の中に変化する。

「マーシャのおる上の軸では、
カフカス王帝領にて、
ついに魔力減少が表面化する」

海に逆さまで揺蕩う
少年の
目の前には
冬の嵐の如く
帯びただしい、灰色の魚の群れ。

その先に見えるのは
岩肌に張り付く様に
潜水をする、
マイケルの姿だった。

「懐かしい姿よの、マイケル。
この軸で御主は水龍の喉仏を
得えて、魔力革命を起こす。」

少年の手に掴まれた持鈴の音が
海底遺構に木霊した。

かつて、
マイケルの異世界体
エネルギーを使って世界の
バランスを整え
マイケルを再び元世界へ
戻した人物の掌には
幾つもの時間軸が交差する。

少年大師は
再び持鈴を鳴らしていく。

*.***.チリンーン、
**.***. チリン…

「やれやれ。人使いの荒い
令嬢も、この海では手も足も
出んか。ならば少し助けん。」

迷うが故に
世界は
閉じられた城で
本当は
東も西もなく
どこに南北があるのか

世界は 空 で
この世は限りなく自由

全ては空。

呟く少年大師の視線の先で、
マイケルは
塊になる魚の群れで、
上手く潜れないでいる。

「そなたの姿は、もはや
遠い昔に感じるようだの。
恋愛遍路していた御主と、
洞窟で出会いまだ1年の姿か」

少年大師はそう言うと、
己の口から
『明けの星』を
取り出して、
金剛杖に纏わすと
其を海中でゆっくりと
解きほぐして
岩肌に張り付くマイケルの方へと
するり、
流した。

「再びマイケルの異世界体を
使う事になるとは。こればかり
は予想の範囲を越える出来事」

すると、
『明けの星』を目指して
塊の魚達は、一列に並んで
川へと泳ぎを整頓して
変えた。

魚の塊一色だった光景が
海中が水と魚
二色のみの景色へと変わる。

「あと5年が間に御主が此の世界
にて蓄えるエネルギーが、
元世界を繋いだまでは想定内 」

少年大師が持鈴を、鳴らす。

**.***.チリンーン、
**.***. チリン…

しだいに目の前の魚の列が
2つ、3つと別れて
其々川々へと昇っていく。

「先の軸にて、予言の為に
ガルゥヲンは討伐遠征へと門を
潜る。ルークのエネルギーを
孕むかと思いきや空っぽとは
此如何。嫌、番となるとはな」

呟き続ける少年大師は
トンと、
足元の遺構回廊を蹴る。

一列に並んで泳ぐ魚の様に
驚いた顔のマイケルの横を
少年大師はゆっくりと
『逆さま』で通りすぎ
沈んでいく。

**.***.チリンーン、
**.***. チリン…

『 Ouuooon Ouuoun Ouuoooon Ouoon゜゜

゜゜ ゜ ゜


「歩き遍路は山と海を行く。
さながら
時間軸が別の世界を旅して
いる様だとマイケルの友が
言っておったが 。言い得て妙。
精神次元旅はポータルは、
必ず交わる。故に影響できる」

今ここに
三つ巴のエネルギーが分岐した。

逆さまでたどり着いた
真っ暗な深淵の
さらに沈んだ場所に
1つ木製の扉が見えると

少年大師はそのまま、
扉を開いて潜る。

**.***.チリンーン、
**.***. チリン…


扉の先には
霧の中に五百羅漢像が並び、
次には
空と海、
叩きつける潮風が、
何とも言えない広陵な景色。

無縁仏の石が路傍に目につく
聖と俗の境界だ。


遍路正装の白衣は、
何時行き倒れてもよいと
死に装束を意味し、
人は巡礼を通じ
生まれ変わる。
この白装束で、
巡礼道の空間に入り、
そこで一旦死の世界に入る。

独特な雰囲気の
堂を通り過ぎ
ルートが別れる分岐点には
大師の像が鎮座する道、、

**.***.キーンン
**.***.カーンン**.


「さて、例の場所に軸を定めん
為マイケルに手紙を届けるか。
なに、すぐに 戻る。
ほんの、6年が間じゃ。些末よ」

大師は、
胸に仕舞ったマイケルへの
手紙を、白装束の上から
撫でると、

持鈴を返事に、鳴らした
大師は
海沿いの道を歩く。


***.コーンーン
**.***. …

**.***.チリンーン、
**.***. チリン…
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