2章・めざせ転移門~異世界令嬢は神隠しに会う。

会議

白亜の会議室に
沈黙が訪れ、
窓の外から射し込む夕方の日が、
壇上のマイケルの横顔を
照らし出す。

部屋に居る誰もが、
思案するように黙っているも
時折、『ううむ、、』
という唸り声を上げては
再び沈黙となる。

そんな状態が数分した後、
マイケルがよく知る声が、
静寂を破る。

「、、しかし其の事は自ずと
答えが出ておろうよ。
だからこその王族であろう?」

場の声を、
静かに目を閉じて聞いていた
ラジが瞼を開けて発言したのだ。

ラジの言葉に重ねて、
口髭を蓄えるサクゥテ地区の
ギルド長も静かに、口を開く。

「言っては何だが、魔力は、
髪や瞳といった外見に比例し
関係しておる。ならば総じて、
魔力量が多い色は王族や貴族に
あるのだ。それが答えぞ。
島の為に尽力してしかるべき。」

場の雰囲気は再び
2人のギルド長達の言葉に、
一致する流れになる。
そして、
マイケルを見定める様に
ツッチーナシュウ地区のギルド長
が、言葉を引き継いだ。

「藩島の長い歴史でも、其の様に
対応してきたのだろう事は、
お主も調べておろうが?」

巨大なグランドエリザベス像を
地区内に戴く、
ツッチーナシュウ地区の長だ。

その長であれば、
代々引き継がれる王族の儀式を
垣間見るているのだろうと
マイケルは予想して、
ツッチーナシュウ地区のギルド長を見つめる。

「もちろん歴代の王族が、結界継
続の魔力を注ぎ込んできた事は、
歴史書からも明らかでした。」

壇上に佇むマイケルは、
少し間を開けて、答えた。

「ならば問題などない!この議題
は終わりでよいだろう!!」

「そうだ!!次の議題にしろ!」

今度はオーベイ地区のギルド長が
揶揄して、
キタターラ地区のギルド長も
同調すれば、
さらに会議の流れが傾いた。

『バン!!ゞゞゞ』

瞬間!!
マイケルが壇上の机を大きく
両手で叩いた!!
一気に会議室内全部の視線が、
マイケルに集まる!

「待って下さい!!じゃあ!
うちのヤオはどうなんですか?!
そして、あたしは?!」

そのままマイケルは、目の前の
ギルド長達に叫んだ!

「ヤオは貴族どころか奴隷出身で
黒髪。なのに多い魔力量を
持ってます。あたしは反対に
黒髪ですが、異邦人で魔力は
全然ありません!!黒髪で黒目
だから?!魔力が多い?貴族、
王族で黒目、黒髪だから魔力が
多い?!そんなの、見た目なんて
当てにならないじゃない!!」

全員の視線がマイケルの髪を
捉えて、狼狽える。

「王族の責務?じゃあ、
ヤオは?魔力が多いからって、
何の特権もないのに、結界保全で
連れていかれるかもしれない!
本当に黒髪の王族に魔力があるか
分からないのに。どうして?!
貴方達の孫にも、同じ黒髪が
突然生まれたら、連れていかれる
未来だってあるでしょうが!」

そこまで一気に言って
マイケルは息を付くと、今度は
冷静な声で長達を見回す。

先程とは違い長の中には、
何かを思い描く様にして、
狼狽えた目をする者も出ていた。

「それに王族で黒髪、実は魔力が
無いなんて事を公言するはずも
ないでしょう?」

思いの外効果を得られた自分の
発言に、
マイケルは手応えを感じて
さらに考えを述べる。

「そんな!!お主は我が藩島王族
に其の様な不審を抱くのか!」

「したとして、王族が絶える事も
疫病が流行れば、あるのでは?」

「不慮の事故や戦もな。」

冷ややかに返すマイケルの言葉に、
被せるようにルークが
最後に短く応えて、
不穏な空気を切った。

ルークの言葉が決めてになる。
何故なら、
ウーリュウ藩島の役目は
帝国領土の護り。
他国との戦い時の要塞でも
ある事を長達は充分理解している。

『うぬぬぬ、、』

再び唸り声だけになる会場に、
マイケルは今日1番の提案を
叩きだした。

「今日、本来の議題になっている
魔充石による『配電と配水』を
藩島全域に整備する件に合わせ、
魔充石を使った結界魔力の
税回収の提案したいのです!」

マイケルの声がギルドの建物に
響く様に走った!

もともと主だった海辺のギルド長が、一同を会した理由。
それは藩島全域に魔充石を使った
配水と配電ライフライン整備だ。

この1年半で、
魔充石を個々の魔力で使用し、
水や光の自己供給は
日用魔道具の普及で城下町を
中心に広がった。

ただしイェンダ地区は未だ、
下層島民や、奴隷出身、
巡礼者の受け入れが多い。

日用魔道具の購入や、
魔道具を稼働させる魔力が無い
人々は新しい魔充石の恩恵からは
取り残されていた。

それをいち早く地区内ライフラインを構築する事で解消したのだ。

もちろん其の功績は、
マイケルの発案によるもの。

地区内ライフラインを藩島全域に
提案する為に、
藩島を囲む海層ギルド連盟で、
まずは下層地区に魔充石による
配水電の構築が、
本来の議題だったのだ。

「意味が分からないのだが?」

ルークが長達を代弁して、
片手を上げ
マイケルに質問をする。

ラジや副長のレサには、
マイケルから直接、
事前に提案の内容はしている。
ルークにも、さっき見せた
資料で理解をさせた介があった。

「要するに、王族だけとか、
魔力多いとかでなくて、全員で
結界に注入する魔力をしましょ!
それを魔充石なら出来るから、
税や、光熱費を払うのに魔力でも
払える様にして回収しましょう!
ってことなんですっ!!」

ルークに応える様に
返事をする事が出来た
マイケルの言葉に、

「「「「ほーっ!!」」」

ギルド長達が感嘆の声を上げた。
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