女神に頼まれましたけど
結局、王太子の願い通りに、『聖女』との婚約が決まってしまった。
国王から指示を受けた宰相が、猛スピードでリザベーテのことを調べ上げたのだ。
元々、小国とはいえ、貴族との婚約の話が出るような娘であったのだ。身分以外の問題などなかった。むしろ、多くの者に愛されていた彼女に、宰相の方が気の毒に思ったくらいであった。
婚約予定だった伯爵家からは抗議があったものの、ロウセル王国の方が国力が上、また、距離が離れていることもあり、それ以上の抗議はされなかった。
そして、その身分についても、すでに『聖女』として認められている彼女に、これ以上の身分はない、との判断がなされた。彼女は貴族よりも尊く、王族と同位であると、判断されたのだ。
そして、王太子妃としての教育が始まる。
商家でも、そこそこ教育は受けていた。それなりの大店だったのだ。しかし、それでも、貴族のレベルとは違う。その勉強をするために、子爵家ではしばらく行儀作法や貴族のことについて学び、その後、伯爵家でブラッシュアップする予定だったのだ。
リザベーテは、けして愚かではなかった。むしろ、一般的な平民の中では、賢い方だったかもしれない。だが、子供のころから学んでいる貴族の子女と比べられてしまえば、どうしたって見劣りがする。
そして教師となるのは、当然、貴族たち。例え、リザベーテが『聖女』であると言われても、王族と同位であると言われても、所詮、平民、という考えは抜けなかった。
結局、言葉や行動の端々に、彼女を侮る振る舞いが見え隠れしていた。
一年を過ぎた頃には、教師たち自身が「この程度ならば」と納得するくらいにはなっていた。むしろ、自分たちの能力のおかげで、ここまで仕上がった、と自負するくらい。
それは、王妃も同じであった。
自分で教えたわけでもないのに、王妃は自分のおかげで、ここまで成長したのだと、感謝しろと、事あるごとに、リザベーテに押し付けた。
そんな扱いをされ続ければ、リザベーテにしても、懐きようがない。
そして、懐かないことを可愛げがないと言う。悪循環が繰り返される。
初めのうちは何度か、逃げようと試みたが、すぐに連れ戻されてしまった。それは、彼女に王家の影がついていたから。聖女に逃げられては王家の恥になる、ただそれだけの為に、彼女の逃亡は毎回阻止されてしまう。
その繰り返しは、リザベーテの心を折ることはなかった。むしろ、より一層、反骨精神を鍛えるものとなる。元々、孤児院育ちなのだ。ただの貴族のお嬢様と鍛え方が違う。
いつしか、可愛らしい幼い顔は、徐々に大人びた美しい顔に変わる。
泣き虫だった彼女も、無表情な冷ややかな美しさを纏うようになった。
ジッと耐えながら、リザベーテは彼らが隙を作るのを待っていた。
一方の王太子はどうしていたかといえば、最初のうちこそはリザベーテの気持ちを得ようと必死だった。強引に連れてきたという負い目も多少はあったから、気を遣うようにした。
しかし、いつまで経っても、リザベーテの心は閉じられたまま、笑顔一つ向けられることはなかい。
当然、徐々にではあるが、王太子の心は、リザベーテから離れていった。
そして、リザベーテが一通りのマナーを学び、教師たちから及第点を得た時点で、国立の貴族学院に入学することが決まった。
母国から連れ去られてから一年が経っていた。
国王から指示を受けた宰相が、猛スピードでリザベーテのことを調べ上げたのだ。
元々、小国とはいえ、貴族との婚約の話が出るような娘であったのだ。身分以外の問題などなかった。むしろ、多くの者に愛されていた彼女に、宰相の方が気の毒に思ったくらいであった。
婚約予定だった伯爵家からは抗議があったものの、ロウセル王国の方が国力が上、また、距離が離れていることもあり、それ以上の抗議はされなかった。
そして、その身分についても、すでに『聖女』として認められている彼女に、これ以上の身分はない、との判断がなされた。彼女は貴族よりも尊く、王族と同位であると、判断されたのだ。
そして、王太子妃としての教育が始まる。
商家でも、そこそこ教育は受けていた。それなりの大店だったのだ。しかし、それでも、貴族のレベルとは違う。その勉強をするために、子爵家ではしばらく行儀作法や貴族のことについて学び、その後、伯爵家でブラッシュアップする予定だったのだ。
リザベーテは、けして愚かではなかった。むしろ、一般的な平民の中では、賢い方だったかもしれない。だが、子供のころから学んでいる貴族の子女と比べられてしまえば、どうしたって見劣りがする。
そして教師となるのは、当然、貴族たち。例え、リザベーテが『聖女』であると言われても、王族と同位であると言われても、所詮、平民、という考えは抜けなかった。
結局、言葉や行動の端々に、彼女を侮る振る舞いが見え隠れしていた。
一年を過ぎた頃には、教師たち自身が「この程度ならば」と納得するくらいにはなっていた。むしろ、自分たちの能力のおかげで、ここまで仕上がった、と自負するくらい。
それは、王妃も同じであった。
自分で教えたわけでもないのに、王妃は自分のおかげで、ここまで成長したのだと、感謝しろと、事あるごとに、リザベーテに押し付けた。
そんな扱いをされ続ければ、リザベーテにしても、懐きようがない。
そして、懐かないことを可愛げがないと言う。悪循環が繰り返される。
初めのうちは何度か、逃げようと試みたが、すぐに連れ戻されてしまった。それは、彼女に王家の影がついていたから。聖女に逃げられては王家の恥になる、ただそれだけの為に、彼女の逃亡は毎回阻止されてしまう。
その繰り返しは、リザベーテの心を折ることはなかった。むしろ、より一層、反骨精神を鍛えるものとなる。元々、孤児院育ちなのだ。ただの貴族のお嬢様と鍛え方が違う。
いつしか、可愛らしい幼い顔は、徐々に大人びた美しい顔に変わる。
泣き虫だった彼女も、無表情な冷ややかな美しさを纏うようになった。
ジッと耐えながら、リザベーテは彼らが隙を作るのを待っていた。
一方の王太子はどうしていたかといえば、最初のうちこそはリザベーテの気持ちを得ようと必死だった。強引に連れてきたという負い目も多少はあったから、気を遣うようにした。
しかし、いつまで経っても、リザベーテの心は閉じられたまま、笑顔一つ向けられることはなかい。
当然、徐々にではあるが、王太子の心は、リザベーテから離れていった。
そして、リザベーテが一通りのマナーを学び、教師たちから及第点を得た時点で、国立の貴族学院に入学することが決まった。
母国から連れ去られてから一年が経っていた。