ロート・ブルーメ~赤花~
「何だかんだ初めての“彼女”だし。……ガラにもなく浮かれてるみたいだ」

 少し皮肉が混じった笑み。

 でも、純粋な喜びが前面に出ていた。


 不覚にも胸がキュッと締めつけられる。


「あ、あたしが初めてなの?」

「ああ。部屋に連れ込んだのも初めてだし、何よりそのリボンを渡したのも初めてだ」

 と、あたしの髪を彩る赤を指差す。

 紅夜の女である印。


 “彼女”が初めてだとしても、女性経験まで初めてってわけじゃないだろう。

 でも、それでも……。


 あ、マズイ……すごく嬉しい……。


 少しうつ向いて、にやけてくる口元を隠す。

 でも隠し切れていなかったみたい。


「……何? 嬉しい?」

「うっ……嬉しい、よ?」

 図星を指されて一瞬誤魔化そうとしたけれど、誤魔化せるわけないと踏んで素直に答えた。


「じゃあこれは答えて。美桜は? お前は俺が初めての“彼氏”?」

 そう聞く表情は優し気だけれど、瞳の奥はヒンヤリしている。

 さっきヘアクリップを誰に貰ったのかを質問してきたときと同じだった。


 初めてじゃないと言ったらどうなるんだろうと思いながら、あたしは正直に答える。

「初めてだよ。……あたし、モテないし」

 逆に紅夜はモテるんだろうなって少し不安が頭をもたげる。
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