ロート・ブルーメ~赤花~
「本気で、俺に食われる気満々だったってことか」

「い、言わないで……」

 言葉にされると本気で恥ずかしい。

 もう瀕死だ。


「なんで? 俺は嬉しいけど?」

「ううぅ……」

 そう言われてしまうと心のどこかでそれならいいか、と思ってしまう自分がいる。

 良くない……良くないけれど……。


「恥ずかしがってる美桜可愛すぎ。……でも――」

 と、少しかがんだ紅夜はあたしの耳元で続きを囁く。


「可愛すぎてここで襲いたくなるから、ほどほどにな?」

「っ!?」

 ここで襲われるのは困る!


 一気に羞恥心より恐怖心が勝った。


「さ、早く行こう。会合ってどこでやるの?」

 シャキッと背筋を伸ばして妖しくなりそうな雰囲気を壊す。

 そんなあたしの思惑も、分かってるとばかりにクスリと笑った紅夜は「こっちだ」と手を引いてあたしを連れて行った。


 ともに歩きながら紅夜が「ああ、そうだ」と思い出したように前を見たまま話す。

「美玲のところには俺が連絡しておいたから」

「……え?」


 美玲って、叔母さん?

 やっぱり紅夜と叔母さんは知り合いなの?


 わずかだった疑問が一瞬で膨れ上がる。

 どうしたって気になってしまう。
< 112 / 232 >

この作品をシェア

pagetop