ロート・ブルーメ~赤花~

 そうして地面を注視しながら歩き、日葵も影に足を踏み入れた時だった。


 背後の大通りの明るさが遮断され、太い男の腕があたし達に襲い掛かる。

 すぐに口を押えられ、お腹の辺りに回された腕に抱えられた。


 何とか見ることが出来た日葵も、同じ状態だった。


『絶対に路地裏には入ってはいけないよ。寄り道をせず、真っ直ぐ行って帰るんだ』

 お母さんと叔母さんに何度も言われた言葉が蘇る。


 そうだ。

 あれは、“絶対”の約束だったんだ。



 後悔しても、捕まってしまった以上どうしようもない。

 あたし達はこれからどうなるんだろう。


 乱暴されるだけならまだいい方。

 乱暴された上で、どこかに売られるかそのまま殺されるか……。

 恐怖に、体が震える。


 ここはそういう街だと分かっていたはずなのに!


 連れていかれた先は古びた倉庫らしき場所。

 街の中心からは少し離れているみたいだ。


 日の光が届きにくいのか、すでに倉庫の中は暗くところどころライトが点けられていた。

 コートを着ているとはいえ、物が少ない倉庫は他の場所よりも寒い。

 寒さのせいか恐怖のせいか、一段と体を震わせる。
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