ロート・ブルーメ~赤花~
 黎華街の本質。

 そして紅夜の秘密。


 それがどうこの花につながるのかが分からなかった。


 秘密を教えると言ったからには、この湧き出てくる疑問を聞いても良いんだろう。

 でも、どれから聞けばいいのか……。


 迷って、まずは目の前に広がるものの正体を問うことにした。


「……紅夜、この花は……何?」

 あたしが見たことのない花。

 図鑑にも載っていないだろう。


 それに紅夜は繊細な花だと言った。

 陽の光もないのに、どうしてここまで鮮やかな赤い色になるのか。


 そして何より、どうしてこの地下でこんなにも多くの花を育てているのか。


 そんな次から次へと出てくる疑問をひっくるめて聞いた。


「この花は何か、か……」

 紅夜は手を引きあたしを立たせ、花畑を静かな目で見渡す。


 優しそうでありながら、悲しそうな目。

 静かに()いでいるようでいて、わずかに怒りのような感情も見て取れた。


 いつもなら感情の読めない目をしている紅夜。

 その彼の瞳にいつになく映る感情の多さに、逆に読み取ることが出来なかった。


「……この花の名前は」

 ポツリと、話し始める。




「ロート・ブルーメと、言うんだ」
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