ロート・ブルーメ~赤花~
 叔母さんの言う罪がどんなことかは分からないけれど、今は辛そうな叔母さんの方が心配だった。

「……ごめんなさいね、取り乱して」

 弱々しさがあるけれど、笑顔を見せてくれる。

 そうして、その視線があたしの右手に止まった。


「そう言えば、そのシルバーリングって紅夜のもの?」

「え? ああ、うん。そうなの」

 聞かれたので、このシルバーリングを身に着けることになった経緯(けいい)を話す。

 しんみりしてしまった雰囲気を明るくするように、最後には紅夜への文句を付け加えたりして。


「それで、結局ヘアクリップ返してくれなかったのよ? 代わりにこのシルバーリングを持ってろって」

 ひどい話よね! と、そこまで酷くなんて思ってないけれどちょっと大げさに言ってみた。


 そうしたら叔母さんはフフッと笑ったので、あたしはホッとする。


「義兄さんから貰ったって喜んでいたもんね、美桜。……でも、そのシルバーリングも紅夜にとっては同じくらい大切なものだから……持っていてあげて?」

 優しいその笑みは、きっと母親のもの。

 実の親じゃなくても、多分似たような感情があるんだなって思えた。


「確か、父親から貰ったものだって言ってたっけ」
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