ロート・ブルーメ~赤花~
「でも、会合の後に美桜は俺の太陽なんだって気付いた。それが分かったら、泣かせたくないと思ったんだ」

 暗く冷たい瞳に、(ともしび)が宿る。

 まるで、その瞳に太陽を映したかのように。


 その明るくなった青い瞳が、グッと近付く。


「だから、美桜が泣かないようにいくらでも甘やかすし、離れない様に優しく甘い鎖で縛りつけるから」

「っ! 紅夜、近いよ。人目が……」

 そのまま口付けされそうな近さに待ってと止める。

 昼間の黎華街は人が少ないとはいえ、少しは出歩いている。

 それに、すぐ近くの出入り口には必ず人がいる。


 見られていないとは思えなかった。

 でも。


「そんなの知るか」

 囁く様にそう言った紅夜はそのままあたしの口を塞いだ。

 深く、強く求めてくる。

「っはぁ……」

 でもちゃんと休む間は開けてくれて、その後でまたすくい上げるように唇を吸われる。

 深いけど、どこまでも甘ったるいキス。


 思考が溶けきってしまう前に離れた唇が、妖しく赤く染まっていた。

「……甘いけど、優しくないよ……」

「そうか?」

「だって、いじわるだもん」

 あたしの言葉に、紅夜は得意げな表情を見せる。


「好きな子にはイジワルしたくなる(たち)みたいだな、俺は」

 そんな紅夜に、あたしは「やっぱり優しくない」と呟いた。
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