ロート・ブルーメ~赤花~
 そのまま本当にしゃがみ込む前に足と腰に力を入れ下半身を安定させると、今度は男の顔面に頭突きする勢いで仰け反る。

 実際に頭突きにならなくてもいい。

 不安定な状態から突然仰け反ったため、男の腕はバランスをとる方に力を入れている。

 あたしを抱えるために力は使われていない状態だ。


 そこですかさずまた腰を落としてお尻を思いきり突き出すと、腰を強く押された男はあたしから手を離しよろけた。


 その瞬間を見逃さずにあたしは男の腕から逃れる。

 そのまま日葵を拘束している男に向かって全速力で走った。


 幸い、こっちの様子を気にしていなかった彼等は油断している。

 近くまで来たら流石に気付かれたけれど、あたしはそのまま男の横から体当たりを食らわせた。


 人は、横からの衝撃に弱い。

 ただでさえ日葵を抱えているんだ。バランスを保つのは難しかっただろう。


 体当たりした男はそのまま横に倒れこむ。

 日葵とあたしも倒れたけれど、すぐに起き上がった。


 男の方は体当たりをしたときに肘を突き出していたので、それが丁度わき腹の急所に当たってくれたらしい。

 悶絶していてすぐには起き上がれないようだった。
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