ロート・ブルーメ~赤花~
 ……。

 …………。


 名残惜しかったけど、その日は紅夜と別れてそのまま家に帰った。


 寂しい気持ちはあったけれど、夜には紅夜の方から電話をくれた。

 お互いに会いたいね、と話しながらおやすみの挨拶をする。


 通話を切ると、途端にまたさみしさが忍び寄って来た。


 全く、これじゃあどっちが溺れているんだか……。


 自嘲しながら、右手のシルバーリングを見つめる。

 お父さんには悪いけど、交換しなくて良かったかもしれない。

 このシルバーリングが、紅夜とのつながりを目に見えて教えてくれるから。


 あたしが紅夜の彼女なんだって(あかし)

 そっと口づけて、あたしは眠りに落ちて行った……。


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