ロート・ブルーメ~赤花~
 本人は悪気はなかったんだろう。

 ただ、いつも通りみんなで楽しく遊ぼうと思っただけ。

 それと、あたし達が話をしようって言ったところを聞いていなかっただけ。


 だから普段通り楽しそうにみんなに声を掛けようとする。

「あ、あのね……」

 日葵が眉尻を下げて困った顔で話しかけようとした。

 でも楽しそうなクラスメートに気が引けるのか、ハッキリ言えないみたい。


 だから――。

「ごめんね、今日は日葵とちょっと大事な話があるんだ」

 あたしが、そう口にした。


「え?」
「美桜……?」

 クラスメートと日葵が揃って目を丸くする。

 そんな驚くことを言ったかな?


「……珍しいね、花宮さんがそういうことハッキリ言うのって」

「え?」

「だって、いつも流されてばっかりな人だったから……」

 言われて、そう言えばそうだったと自分でも気づく。


 周囲に合わせて流されて。
 自分の意見は二の次にしていたのがあたしだった。


「あ、べつに嫌だって思ってるわけじゃないからね? そういうの、ちゃんと言ってくれる方が嬉しいし」

 失礼なことを言ったと思ったんだろうか。

 彼女は慌ててそう伝えると、「じゃあ一緒に遊ぶのはまた今度ね」と言って去って行った。

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