ロート・ブルーメ~赤花~
 良かった。

 日葵がこれだけ想ってる相手だもん。

 うまくいって欲しいなってあたしも思う。


「そっか。じゃあ、今はもう一つの心配事に集中しないとね」

 気持ちを切り替えてそんなことを言う日葵に首を傾げる。

 まだ何かあるんだろうか。


「心配事?」

 聞くと、軽く目を見張った日葵に聞き返される。

「まさか美桜、忘れてないよね?」

 そう聞くってことはあたしにも関係あることみたいだ。


 何かあったかな……?


 ピンと来ていないあたしに、日葵は呆れた眼差しを向けた。

「……期末テスト。そろそろ一週間切るよ?」

「……」


 きまつ、てすと……。

 あたしの頭の中に無かった単語に、数秒固まってしまう。

 つまり、すっかり忘れていた。


「……ヤバイ、忘れてた」

 いや、正確には覚えていたけどそれどころじゃなかったから。


「美桜、他は大丈夫だけど数学は散々だもんね」

 日葵の言う通りだった。


 記憶力が良いあたしは、ほとんどの教科は大体高得点を取れる。

 でも、数学だけはそうはいかない。


 公式はしっかり覚えていても、どの問題に当てはまめるかなどが出来なくて意味がない。

 複雑な計算になると、その時点でこんがらかってくる。


 結局のところ、あたしが得意なのは記憶力だけなんだ。
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