ロート・ブルーメ～赤花～
「私だってお互いの誕生石を使ったネックレスを贈ったのに……。あれはどこにやってしまったんだろうね。紅夜の父だと名乗り出もしない男から貰ったものは息子に渡すほど大事にしているみたいなのに」

「……」


　なんだかすねているみたいだった。

　正直、あたしにそんなことを愚痴られても……。


「ああ、悪い。こんなことを言いたかったわけじゃないんだ」

　途中で自分でも愚痴ってしまったことに気づいたのか、バツが悪そうに謝罪される。


　渋くて大人っぽいと思ったけれど、こうして話してみると案外子供っぽいところのある人だな、と驚きと呆れの混じった感情を抱いた。


「とにかく、私が言いたかったのは……紅夜をよろしく頼むってことだよ」

「え？」

「実の父親ではない私が出来ることは少ない。美玲も母親代わりになってはくれたが、あくまで代わりでしかない。街から出すことが出来ないあの子に、家族と言うものを与えてやることは出来なかった」

「……そう、ですか？」

　自責の念に駆(か)られている様子の隆志さんだけれど、あたしはその言葉を疑問に思う。


　紅夜は気にしていないと言った。

　あのときの言葉に嘘はなかったように思う。


　母親代わりと、父親だったらいいなと思う人がいると言った紅夜は、幾分優しそうに見えた。
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