ロート・ブルーメ~赤花~
 確かに紅夜は普通の家族と言うものは知らないんだろう。

 学校にも行けなかったり、あの危険な街で《管理者》なんてしているし、怖いところもある。


 それでも、ちゃんと人を好きになれる人だ。


 紅夜なりに、隆志さんの愛情も受け取っているんじゃないかな?

 そう思わずにはいられない。


「……隆志さんは、紅夜に会いに行ったりしないんですか?」

 街にはあまり行かない様にしていると言っていたけれど、少しは会いに行ったりしてるんだろうか?

 きっと紅夜も会いたいと思ってるんじゃないかな?


「いや、時折電話くらいはしているが会いにはここ数年行ってないな」

「え? 数年って……」

 そんなに!?


「……紅夜の選んだ君にだから話すが……」

 ためらいながらそう前置きをする隆志さん。

「怖いんだよ。あの子の中に、あの子の母親以外の面影を見るのが。……それを見たら、きっと私は紅夜に酷いことを言ってしまう」

 だから会えない。

 会うのが怖い。

 そう言った。


 臆病だと思う。

 でも、紅夜を傷つけたくないという気持ちも本当みたいだから……。

 だからあたしにはこれ以上何かを言うことは出来なかった。

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