ロート・ブルーメ~赤花~
「ああ。毎年四月にあの人の誕生日プレゼントを渡しにな。紅夜、見かけによらずそういうの律儀だから」

「紅夜が……」

 ちょっとだけ、分かるような気がする。


 叔母さんへの気安さの中にある親しみの様子とか。

 あたしにご飯作ってくれたりとか。

 紅夜は案外愛情深い人なんだと思う。


「え? あの人が? 本当に?」

 でも日葵からしたら信じられないようなことだったみたい。

 まあ、日葵の中の紅夜のイメージを考えるとそれも仕方のないことかもしれないけれど。


「はは、日葵からしたら紅夜は鬼か悪魔みたいに見えるか」

 なんて言って笑う愁一さんは、重そうな荷物を抱えなおした。


「とにかく、街に入るか。さすがにちょっと重い」

「あ、はい。すみません、そんなに多くなるなんて……」

 想定よりも多い荷物に、あたしは謝罪する。


「いや、これは俺達の買い物も入ってるから」

「え?」

「あたしも愁一兄さんに手料理を振る舞おうと思って」

 元気よく言う日葵に、おお! と少し驚く。


 会いたいと寂しそうにしていた日葵だけれど、いざ会えたらあとはかなり積極的だったらしい。

 まさかデート中にそんな約束を取り付けるなんて。
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