ロート・ブルーメ~赤花~
 今、日葵のことを大事な女って言った?

 身内としてって意味かも知れないけれど……でも、ただの身内に使う言葉じゃないよね?


 愁一さんの陰になっていて見えないけれど、きっと日葵は嬉しそうな顔をしていると思う。

 これは後で聞かせてもらわないとね。


 なんてちょっとドキドキしていると、紅夜はあたしから離れることはせず片腕だけを愁一さんに伸ばした。

「ん」

 食材を取りに行くことはせず、むしろ持ってこいと言わんばかりの態度。


「紅夜……」

 流石にそれはズボラなんじゃ……。

 呆れるけれど、あたしと少しでも離れたくないと思っていてくれてるのかと思うとやっぱり嬉しいという気持ちが勝って……。


 うん、やっぱりあたし、重症だね。


「はぁ、ほらよ。こっちはお前らの分だから」

 ため息を吐きつつも持っていた袋を紅夜に渡してくれる愁一さん。

「ああ、ありがとな」

 態度は偉そうだけれど、お礼はちゃんと言う紅夜。

 こういうところが律儀なのかな?


「じゃ、また明日な」

「ハイハイ、夜は出て来ねぇってことな? 分かったよ」

 そんな言葉を交わしてあたし達と愁一さん達は別れた。

 最後にチラッと日葵を見て、ファイト! の意味を込めて拳を握って見せる。

 そうしたら、日葵も拳を握って頷いた。
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