ロート・ブルーメ~赤花~
「つったってDVDなんか用意してないし……他愛ない話って何話すんだよ?」

 不貞腐(ふてくさ)れるような言い方だったけど、紅夜はあたしの気持ちを汲み取ってくれたみたいだ。

 そんな紅夜が、どうしようもなく好きだと感じた。


「俺の日常の話なんて、花育ててるかケンカしてるかくらいしかないぞ? 話すなら美桜のこと聞かせろよ」

「うん」

 紅夜の胸に頭をスリスリして嬉しさを噛みしめてから話をした。


 家でのことや、学校でのことを。


「そうそう。あとはもう少しで期末テストなんだけどね、あたし日葵に言われるまで忘れちゃってて……」

 と、この間あった失敗談を話していると。

「……え? お前テストあんの? テスト勉強とか大丈夫なのか?」

 って、本気で心配された。


「大丈夫だよ。心配なのは数学だけだし、月曜から死ぬ気で頑張れば」

 うん、死ぬ気で頑張れば少なくとも赤点は回避出来ると思う。


「……ちょっと待ってろ」

 大丈夫だと言ったのに、紅夜は真顔でそう言うと奥の部屋に行ってしまった。


 少ししてから戻ってきた紅夜の手にはノートや筆記用具。
 そしてあたしが使ってるものとは違うけれど数学の教科書があった。

 ローテーブルの上にそれらを広げると、紅夜は「テスト範囲どの辺り?」と聞いて来る。
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