ロート・ブルーメ~赤花~
「すごく分かりやすい! ありがとう紅夜、これなら赤点回避どころかかなりいい点とれるかも!」

「そうか? お役に立てて何より」

 おどけて言う紅夜に、本当に助かったと思う。


「何かお礼しなきゃね……」

 だからそんな言葉がスルリと出てきてしまった。


「お礼なら夕飯作ってくれるんだろ? 明日も」

「でもそれはあたしがやりたいことだし……。紅夜は他に何かしてほしいことはないの?」

 聞くと、少し考えた紅夜は何か思いついたのか軽く眉を上げる。

 あたしと目を合わせたときには何だかニヤついてるように見えたから少し身構えた。


「な、なに?」

「じゃあお礼に、美桜の方からキスしてくれよ」

「え?」

「思い返してみればいっつも俺からだったし、たまには美桜からキスしてほしい」

「っ!」


 確かに、あたしは自分から紅夜にキスしたことはなかった。

 あたしがキスしたいなって思うより先に紅夜がキスしてくる方が多かったってのもあるけれど……。


「ダメか?」

「ダメ、じゃない」

 そんな風に聞かれたら嫌とは言えないじゃない。


「じゃああとでしてくれよ? 今はまず範囲を一通り消化しないとな」

 その後の紅夜はご機嫌で、逆にあたしは少し悶々としてしまった。

 後から改めて、とか恥ずかしすぎるんだけど……。

 第一、お礼がそれで本当にいいのかな?


 疑問だけれど、紅夜が嬉しそうだから……いいのかな? って思った。
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