ロート・ブルーメ~赤花~
 ……。

 …………。


「……美味しい」

 結局、朝食はまた紅夜に作って貰った。

 昨日あたしがお風呂に入っている間に仕込んでいたらしくて、しっかりしみ込んだフレンチトーストがとっても美味しい。


「でもあたしが作りたかったのに……」

 美味しいのが逆に悔しくて、ついそんな不満を零した。

「良いんだよ、美桜には夕飯期待してるから。……それに、美玲と暮らしてた頃は朝食俺が担当だったし」

 若干遠い目をして言った紅夜に、あたしも「ああ」と遠い目になる。


「……叔母さん、昔から朝弱いみたいだからね……」

 お母さんから昔の叔母さんの話は聞いていたし、先週午前中に行った時の様子を見てもそれが事実だと分かる。

 紅夜の様子を思うに、かなり小さいころから朝食を作っていたんじゃないだろうかと考えられた。


 叔母さん、反面教師も度が過ぎるとまずいよ……。


 今更ではあるけれど、心の中で突っ込まずにはいられなかった。


「まあ、そういうわけだから気にすんな」

「……分かった。ありがとう、本当に美味しい」

「代わりに夜は期待してるからな。料理も、美桜も」


 あたしも……って!


「っ!? あ、朝から何言ってるのよぉ!」

 瞬時に赤面するあたしに、紅夜は「朝でも俺は狼だからな」なんて言って返した。
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