ロート・ブルーメ~赤花~
 紅夜は先に地下へ行く予定らしかったので、愁一さんと共に日葵にはエレベーターの前のところまで来てもらった。

「じゃあ大丈夫だと思うけど気をつけてな」

 と、頬にキスをして紅夜はエレベーターの中に一人戻る。


「……あの人って、何をしてるの?」

 紅夜を警戒してエレベーターの扉が閉まるまで息をひそめていた日葵が疑問を口にする。

 地下のことは多分言わない方が良いんだよね……?


 あたしは何と答えるべきか迷って、愁一さんを見た。

「あー……まあ、秘密の仕事?」

「……」

 いやまあ秘密ではあるだろうけれど……。

 愁一さん、アバウトすぎないかな?


 でも、その答え方である程度分かった。

 少なくとも愁一さんも地下の花畑のことは知ってるってことが。


 多分、あたしより詳しく知ってるんじゃないかな?


 いつだったか言っていた、紅夜には赤黎会という存在が必要だって。

 それはまだあたしが知らないこと。


 いつか、全てを知ることが出来るのかな?


「秘密って……ヤバイ事なんじゃ……」

 青ざめる日葵に、あたしと愁一さんは慌ててそんなことじゃないと伝える。

 詳しくは話せないけど、比較的まっとうな仕事だって。


 “比較的”ってところにまだ不信感を抱いていたけれど、日葵は気を取り直してくれたようだ。

「ま、いいわ。とりあえず行きましょう? 愁一兄さん、途中までは送ってくれるんでしょ?」

「ああ」


 そうして、あたしと日葵は黎華街の外へと向かった。
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