ロート・ブルーメ~赤花~
「あの娘、実験に使うにも丁度良かったのでは?」

「!?」

 実験!?

 この人達、何をするつもりなの?


 不穏な言葉に嫌悪と恐怖が一緒に沸き上がる。


「そうだが、実験ならこっちでも十分だろう?」

 Kはそう言ってあたしを見た。

 手を伸ばして来て、顎をとらえられる。


「紅夜とロート・ブルーメさえ手に入れば、これは用済みなのだから」

 息が、止まる。

 まるで道具のように口にされた用済みという言葉。

 彼らにとって、あたしの価値は人質以外にはないってことだ。


 それに、紅夜とロート・ブルーメを手に入れる?

 それは一体どういうことなのか……。


「……ロート・ブルーメは、薬になるんでしょう……?」

 聞かずにはいられなくてそう口にする。

 すると、Kはよくぞ聞いてくれたとばかりに上機嫌になる。


「そうですよ? 根は毒を抜けば画期的な薬を作る材料に。そして花はもっと素晴らしい!」

 興奮するKは、狂っている様にすら見えた。


「燃やしたり蒸留したりすることで、幻覚作用や妄想といった症状が現れる。人を洗脳するのにも使えて、とても素晴らしい薬なんです」

 幻覚作用や、妄想?
 しかも洗脳って……。

 それは、薬は薬でも麻薬の部類に入るんじゃないだろうか。
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