ロート・ブルーメ~赤花~
 この人達と紅夜を会わせたくない。

 でも、日葵を逃すために大人しくすると言ってしまった。


 日葵はもう逃げたんだから大丈夫と言えなくもないけど、約束を破ったらどうなるのかが分からない。

 たとえなりふり構わず暴れても、無駄な抵抗にしかならない気がする。


 それくらいならチャンスがあったときのために体力を温存しておいた方がいい。

 気は焦るけど、今は彼らの言う通り大人しく付いて行くしかなかった。


「それで? 地下への入り口というのはどこかな?」

 大通りを悠々と歩きながらKが大柄の男に聞く。

「はい、中央近くにあるエレベーターが唯一の入り口の様です」

 しっかり調べられてるってことか。


 紅夜がいないと行けない場所なのに、よく分かったものだと思う。


「ではそこへ急ごう。早く全てをこの手にしたいものだ」

 クツクツと楽し気に喉を鳴らすKは、まるで獲物を獲得せんとする狩人の様だ。

 紅夜という狼を狩り取ろうとするような……。


 赤ずきんに例えたら彼は猟師ということになるんだろうか?


 でも、こんな助けになんて全くならない猟師だったら初めからいらなかった。

 赤ずきんの元になったお話のように、狼に食べられておしまい。

 それで良かった。


 こんな猟師は、いらない。

 足を進めながら、あたしは苦々しくそう思った。
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