ロート・ブルーメ~赤花~
 エレベーターのある開けた場所まで、特に何の邪魔も入らずスムーズに進んだ。


 紅夜は先に地下へ行くと言って数十分前にここで別れた。

 その程度の時間だとまだ地下にいるかもしれない。

 地下には電波が届かないみたいだから、今の状況を紅夜はまだ知らない可能性が高い。


 このままじゃ、何も知らない紅夜がエレベーターを出たところに鉢合わせしてしまう。

 紅夜は強いけど、あたしという人質までいる状況だとどうなってしまうのか……。


 嫌な想像ばかりが脳内を()める。


 そうして、ついにエレベーターの扉が開いてしまった。


 Kや大柄な男の姿を目にした時点で紅夜は即座に戦闘態勢に入る。

 でも、状況把握のためか見回してあたしと目が合うと、隠しきれない動揺がその綺麗な顔に浮かんだ。


「……美桜?」

「紅夜っ……!」

 助けを求めたい言葉をギリギリで留める。

 そうして求めた結果、紅夜がひどい目に遭ったらその方が嫌だったから。


 どちらにしろ、この場の主導権はあたし達になかった。


「君が紅夜か……。なるほど、綺麗な顔をしている」

 Kが楽しそうに目を細める。

 そして、あたしの方へと近づいてきた。
< 197 / 232 >

この作品をシェア

pagetop