ロート・ブルーメ~赤花~
 何を? と思った次の瞬間には後ろ手に拘束され、その状態のまま紅夜の前に突き出される。

「さて、状況は把握出来ているかな?」

 冷酷な声に愉悦(ゆえつ)を含ませて、Kは紅夜に問いかける。


 紅夜は頭のいい人だ。

 分からないわけがない。


 ギリッと歯を食いしばり、見たことが無いほどに焦りをその顔に浮かべている。


「察しのいい人間は好きだよ。分かっているとは思うが、私達の目的はお前とロート・ブルーメだ。観念してくれるかな?」

 どこまでも冷たい声なのに、言葉だけは優し気に響かせる。


「……分かったよ」

 紅夜は悔し気にKを睨みながら、警戒態勢を解いた。


 するとすかさず他の男達が紅夜を拘束しにかかる。

 ロープで後ろに両手を縛られていく紅夜を見て、あたしは泣きたくなるのをこらえられなかった。

 ぽろぽろと涙をこぼすあたしを見た紅夜は、安心させるかのように優しく微笑んだ。


「少し、美桜と話をさせてくれないか?」

 紅夜の提案にKは少し難色を示す。

「それを聞き入れるメリットは?」

「俺が、少し従順になる」

「……」

 腹の探り合いのような言葉を交わして、Kは少しだけ折れることにしたらしい。


「三分だ。それ以上は待たない」

 そう言うと、あたしを紅夜の方に押し出すようにして腕の拘束を解いた。
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