ロート・ブルーメ~赤花~
ざわざわと騒がしくなる教室で、あたしは黙々と帰る準備をする。
そんな中、近くで盛り上がっていたグループの一人が声をかけてきた。
「ねえ、花宮さんも行かない? カラオケ」
「え?」
突然の誘いに驚いて顔を上げた。
こんな風に誘われることは実は初めてじゃない。
でも、クラスでも大人しめなあたしを誘うってことには理由がある。
あ、やっぱり。
カラオケに行こうと近くで話していたグループの中には、あたしにとっては唯一の親友と言える三船 日葵がいた。
彼女は美人で明るくて、男女ともに人気のある子だ。
その日葵が遊びに誘われる度にあたしもどうかと声をかけるので、いつの間にか日葵を誘うときはあたしもセットということになっていた。
「ね、行こうよ美桜。最近カラオケ行ってなかったし、テスト前に楽しんでおかなきゃ」
日葵が近くに来て直接誘いに来る。
今日は図書館から借りてる本を読んでしまおうと思っていたんだけれど……。
返却日が明後日だったため、そろそろ読み切っておかないとと思っていた。
でも、そんな理由で断られるのは嫌だよね……。
あたしは自分の思いを押し殺し、「うん、行こう」と笑顔を作った。