ロート・ブルーメ~赤花~
「愁一さん、すみません。スマホありがとうございました」

「あ、ああ……なんかあんた、すげぇな。……まさか隆志さんが紅夜の実の父親だったとか……」

 愁一さんはスマホを受け取りながら驚きの表情であたしを見ていた。


 今の会話はあたしの声しか聞こえていなかっただろうけど、それでも会話内容の推測は出来たんだろう。

 今のやり取りを理解してくれていた。


「別にすごくなんかないですよ。……ただ、ちょっと記憶力が良いだけです」

 記憶力が良いだけ。

 見聞きしたものを覚えているというだけ。

 そして、思い出すことが出来たからそれらを繋げられただけだ。


「いや、それ十分すげぇから」

 呆れられたけれど、あたしからしたらケンカも強くて頼りになる愁一さんの方がすごいと思う。


「……あたしからしたら、紅夜に頼られている愁一さんの方がすごいですよ」

 そう言ったら変な顔をされてしまった。

「頼ってる? 紅夜が? いいように使われてるようにしか思えねぇけど」

「そうやって甘えてるんですよ、きっと」

 そう言うともっと変な顔をされてしまったので、少し笑ってしまう。


「……だって、愁一さんや赤黎会の人達はあの花畑と紅夜を守ってくれていたんでしょう?」

「……それは……」
< 207 / 232 >

この作品をシェア

pagetop