ロート・ブルーメ~赤花~
「そうね……そのせいであなたは記憶障害を起こして、花畑のことも紅夜のことも忘れてしまった。他にも後遺症が出るかも知れなかったから、お使いと称して月に一度ここに来るようにしたのよ……」

 それが、お使いはあたしじゃなきゃいけなかった理由。

 目的はあたしの健康状態の把握のため。

 お使いの方が仮の理由だった。


「……叔母さん、叔母さんの罪も分かったよ」

 あたしはそのことも告げる。

「っ!」

 息を呑み驚く叔母さんに、あたしは淡々と言った。


「許されることじゃない。少なくともあたしは腹が立った。でも、叔母さんの罪を罰するのも許すのもあたしじゃない。紅夜だよ」

「……そうね」

「だから、早く助けに行こう。助けて、紅夜にちゃんと話をして」

「ええ、分かったわ」


 静かに、でもしっかりと前を見据えた叔母さんはすぐに動き始めた。



 家の裏手に行っていてと言われて先にそちらに愁一さん達と向かう。

 少ししてから来た叔母さんは、見覚えのある小瓶を人数分持ってきていた。


「……これは……」

「これはロート・ブルーメの麻薬成分を中和するための薬よ。二年前美桜が被害に遭ってしまったでしょう? やっぱり必要だってことになってこっちも研究して作っておいたのよ」
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