ロート・ブルーメ~赤花~
「紅夜!」


 いた。

 見つけた。


「っ!? 美桜?」

 胸に広がる喜びのまま、彼の胸へと飛び込む。

 拘束されていた紅夜の腕は解放されたのか、自力で解いたのか。

 縛られていない彼は今度こそあたしを抱き返してくれた。


「紅夜、良かった……」

 無事を確かめるように、しっかりと抱き着く。


 でも安心するあたしと違って紅夜は慌てていた。

「美桜、何でお前がここにいるんだ。こういう時に来る連絡係は赤黎会の奴って決めていたはずなのに……」

 元々計画していたと言っていた。

 万が一に備え、今のようなプランも立てていたんだろう。


 ただちょっと、あたしというイレギュラーが起こっただけ。

 そんな些細なことのはずだけれど、紅夜は目に見えて動揺し焦っていた。


 感情の読み取りづらいはずの彼の目は、今はとても分かりやすい色を浮かべていた。


「大丈夫だよ。中和剤は飲んだから」

「でも、それでも万が一また忘れたら……」

 動揺からか、黙っていたことを口走る紅夜。

 ハッとして手のひらで口を閉じるけれど、そんな必要はない。


 だって、ちゃんと思い出したから……。

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