ロート・ブルーメ~赤花~
「ごめんね紅夜。忘れてしまって……」

「え……?」

「二年前の約束、今度こそちゃんと果たすから」

「美桜……思い、出して……?」


 驚く紅夜に、あたしは泣きそうな笑顔を向けた。


 そう、二年前のあの日。

 この場所で出会った金色の儚い太陽と、あたしは約束したんだ。



『あたしがあなたの太陽になるよ。それで、ずっと一緒にいてあげる』

 そう約束したのに、忘れてしまった。

 不可抗力だったけれど、絶対に忘れちゃいけなかった約束。


 思い出したからには、絶対に守る。


「大丈夫だよ、紅夜。花達の太陽は結局全てを燃やしてしまったかもしれないけど、紅夜の太陽は――あたしは燃やしたりなんてしないから」

 二年前に言った言葉を借りて、そう伝える。

「――っ!」

 息を呑んだ紅夜は、あたしを苦しいほどに抱き締めた。


 そんな彼の腕の中、安心してしまったからかな?

 今まで気力で持たせていた体が限界を迎えた。


 ズキン、と頭の痛みがぶり返す。

「っつ!」

「美桜?」

「ごめん紅夜……。急に思い出したから、頭がちょっと……」

 何とかそこまでは言葉にしたけれど、後は目を開けるのも無理だった。


「美桜!」

 紅夜の呼びかけにも応えられなくて、あたしはそのまま意識を手放してしまった……。

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