ロート・ブルーメ~赤花~
「美玲は罰を受けなきゃないのにこれじゃあむしろご褒美だ、なんて言って落ち込んだり喜んだりしてる。別に罰したいわけじゃないから、素直に喜べばいいのにな」

「まあ、そういうわけにもいかないんじゃないかな……?」

 取り返しのつかない罪を犯したと思い悩んでいたときの姿を思うと、そう簡単には喜べないんだろう。


「……というか、隆志さんは本当にそれで良いの? 明らかに紅夜のためだけに結婚しようとしてない?」

「まあ……父さんは母さんのことをいまだに忘れられないみたいで、なかなか結婚相手を見つけられなかったらしいし……美玲みたいにその辺りのことを分かっていても結婚してくれそうな人が他にいないんだとか言ってたな」

「……」


 隆志さんがネックレスを贈ったと話してくれたときのことを思い出す。

 大人なのにすねてるような言い方をしていた。


 ……結構こじらせてたんだな。


 もはや何も言えない。


「……紅夜が良いなら、それで良いんじゃないかな?」

「みんなそう言うんだよな」

 と、少し困ったように息を吐く紅夜。


「だって、一番縛られていたのも、被害に遭ったのも紅夜だもん。誰だってそう言うよ」

 ロート・ブルーメのせいで黎華街から出られなかった紅夜。

 臆病な大人達のせいで本当の家族として暮らせなかった紅夜。


 18年という長い間あの街に縛られて、これで被害者じゃないなんて嘘だろう。
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