ロート・ブルーメ～赤花～
「俺のせいで記憶も約束も忘れてしまった。もうお前を巻き込みたくなかった」

「……でも、また会った」

　二週間前、男達に襲われていたあたしを助けてくれた。


「あれは本当に偶然だったんだよ。お前だとすぐに気付かなかったし……。あのときは本当に、変わった女を抱いてみたいって思っただけだった」

「そうなんだ……」

「お前のお使いの相手が美玲だと知って、初めて気づいたんだ。……あのときは衝撃を隠すのに必死だったよ」

「そう、なの？」

　驚いてはいたみたいだったけれど、そこまでとは思わなかった。


「そこからはもうあっという間だな。俺から離そうともしたけど、結局は離したくないって思いの方が強かったし、俺の手の中に落ちてきたお前を手放すことなんて出来なかった」

「……うん」

「そして俺は、お前に二度目の恋をしたんだ」

「二度目？」

「ああ。会合の後、俺の太陽となって温もりをくれた。約束のことなんて覚えてなんかいないのに、知らずとも約束を守ってくれた美桜をまた好きになったんだ」


　紅夜の告白に、胸が温かくなる。

　嬉しくて、涙があふれた。


「……あたしは、ちゃんと紅夜の太陽になれてる？」

　紅夜に、温もりを与えてあげられている？


　紅夜は今にも零れ落ちそうなあたしの涙を指ですくって、覆いかぶさるように顔を近付けてきた。

「当たり前だ。マイナ・ゾンネ――俺の太陽は、美桜……お前だけだ」

「んっ」


　そうして、あたし達は温もりを与え合うようなキスをした。


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