ロート・ブルーメ~赤花~
 あたしは少し考えて無事だという事と、詳しい話は明日するということだけを伝えるメッセージを送る。

 今電話で詳しく話すのはちょっと……。

 どこからどこまで話していいものかも判断できないから。


 あたしは日葵から《分かった》というメッセージが返ってきたのを確認するとスマホをしまった。


 そうして部屋の中を見回して、街を見下ろせる大きな窓に近付く。


 ギラギラとした光が集まるネオン街。

 綺麗だとも思えるけれど、あの中には入りたくない。

 外から、少しの憧れと恐怖を抱いているのが一番いい気がした。


「結構見晴らしは良いだろう?」

 いつの間にか戻って来ていた紅夜が後ろから声をかけてくる。


「うん……こうして見る分には普通の街なんだね」

「普通の街、ね」

 含みのある言い方に首を傾げると紅夜は街を見下ろして続けた。


「この街の本質は、上空からなんて見れないからな……」

 どういう思いで口にした言葉なんだろう?

 見下ろす目はどこまでも冷たくて、横から見ていても寒さを覚える。

「……上空から見れないって、地下とか?」
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