ロート・ブルーメ~赤花~
 ……

 …………


 少し赤みを帯びた焦げ茶の髪を一つに束ねて前に垂らす。

 その髪を叔母さんから貰った赤いリボンでしっかり結んだ。


 黎華街に行くときはいつもこの髪型、このリボン。

 理由は教えてもらえなかったけれど、叔母さんは必ずこのリボンをつけてくるようにと言っていた。

 きっと、あそこを安全に通るために必要なことなんだろう。


 どうしても忘れてしまったり無くしてしまったら、とにかく赤い物を目立つ場所につけるようにとも言っていた。

「ねえ、何か身に着けられる赤いもの持ってる?」


 黎華街に向かう道中日葵に聞いてみる。

 ついて来るなら、日葵も赤いものを身に着けた方がいいだろう。


 日葵はカバンやポケット、あらゆるところを探してから「持ってない」と答えた。

 なのであたしは何か持ってたかな、と自分のカバンを漁ってみる。


「あ……」

 一つだけあった。

 でもこれは……。


 他にないか更に探したけれど、見当たらない。

 どこかに寄って購入するという手もあったけれど、日が短くなって来た今は少しでも時間が惜しい。


 仕方ないか。


 あたしは唯一見つけたそれを取り出し、「目立つところに付けて」と日葵に渡した。

「ヘアクリップ? 赤い花が可愛いね」

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