ロート・ブルーメ~赤花~
誘いの交換条件
目深にフードを被った紅夜があたしの手を引いて静かになった街を歩く。
夜の騒がしさが嘘のように、通りを歩いている人は他にいない。
まるでゴーストタウンのような大通りを二人だけで歩いた。
先を歩く紅夜は、フードのせいで顔が良く見えない。
フードを被った紅夜にどうして隠すのかと聞いたけれど、隠すわけじゃないと言われた。
「太陽の光に弱いんだよ。朝はまだ大丈夫だと思うけど、あんまり浴びてると日光湿疹みたいになる」
詳しく聞くと紅夜は生まれつき色素が薄いらしい。
それでどこか体が弱かったりなんて事は無いけれど、肌の色素も薄いからか日の光に弱いのだとか。
「あ、じゃあもしかしてその髪と目は……」
「そ、地毛だし、カラコンなんて入れてねぇよ?」
そう言ってフードの中から試すような眼差しがのぞく。
「気持ち悪い?」
聞いてくる声からは感情が読み取れない。
ただ、聞いてみただけという感じ。
でも、そう聞くって事は誰かにそう言われたことがあるのかもしれない。
そう思うと、心臓がギュッと苦しくなって泣きたくなってくる。
あたしは繋いでいる紅夜の手を両手で包み、「気持ち悪くなんてない」と答える。