ロート・ブルーメ~赤花~
「それに、助けてくれたでしょ?」

「そりゃ、当然でしょ?」

「当然でも実際に出来るかどうかは別だよ。……ありがとう、美桜」

「日葵……」

 本当に日葵はあたしを恨んでいないんだなって分かった。


 それなのにいつまでもあたしが気にしていたらダメなんだってことも。


 だから、ちょっとまだ罪悪感はあるけど気にしない様にしようと思った。



「……で、話は戻るんだけど……」

 少しの間のあと、日葵はまた気まずそうに話し出す。


「あの人に凄まれて、あたし怖くて……本当のこと言わないと殴られるって本気で思ったの」

「紅夜が?」

 確かに笑顔で人を殴りそうな怖い部分もある人だ。

 でも、一般人の女の子に本気で殴るようなことは……。


 しない、とも言いきれなかった。

 思い返せば、はじめは笑顔であたし達を(おど)しにかかってたし。


 やっぱりあたしは紅夜のことを何も知らないんだな、と少し寂しく思った。



「だからね、あたし馬鹿正直に美桜のものだって言っちゃったの。あたしが突然黎華街に来たいって言ったから貸してくれたって。美桜の大事なものだって」

 あたしの考えてることなんて知らない日葵はその時のことを思い出したのか少し震えながら話す。
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