ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
伊吹という人物をよほど、信頼しているんだな。

「お先に失礼します」 

「お疲れ様」

きちんと仕事をこなし、定時には席を立つ。
彼女の無駄のない効率のよい仕事ぶりには満足している。

「ふーん」

何となく落ち着かず、社内を歩いていると、受付の女子社員がひそひそと話していた。

「社長秘書の木村さん。これから、あの可愛い子と飲み会らしいわよ」

「えー!悲惨!私なら絶対に無理!隣に並んだだけで差がつくし」

「八木沢社長の社長秘書になったことへの仕返しみたいよ」

なんだ、それ。
ドンッと足で前を塞いで微笑んだ。

「どこで、飲み会?」

「しゃ、社長!?」

「どこだ?」

「最近できたイタリアンレストランです」

手を震わせながら、スマホを操作し、こっちに地図と店名を見せる。

「そうか。ありがとう」

社長室に戻ると、運転手に電話した。
憂鬱そうな顔をしていたと思ったら、そういうことか。
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