ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
垣間みる素顔

「八百屋からもらったメロン、食べていいわよ」

大きなメロンを片手に母親が現れ、どんっと台所のテーブルに置いた。
同じ商店街で店をかまえる八百屋からメロンをもらったらしい。

「ふむ」

台所で包丁を取りだし、包丁を研ぎ終わると、ドヤ顔で伊吹(いぶき)に言った。

「狩りにいこうぜ!」

「姉ちゃん、そういうのいいから。はやく(もら)い物のメロン切ってくれ」

面倒そうに言われた。悲しい。

「はあ。つまんない弟ね。ノリが悪いったら」

「メロン切るのに包丁を研ぐ必要はないだろ」

「雰囲気よ、雰囲気」

このロマンがわからないとは。

「なあなあ。金曜日の夜、黒塗りの車で帰ってきていただろ?」

「あー、うん。社長が送ってくれてさ。あんな車に乗ることないから、びっくりしたわ」

「まさか、予定ってその社長とデート?」

「伊吹よ」

弟に憐れみの目を向けた。

「すぐに男女の仲に結びつけるのは童貞の証だよ?」

ぽんっと肩を叩いた。

「ほんっと最低だな。お前!年頃の弟に言うことかよ!」

「早く素敵な彼女を見つけなよ。ほら、憐れな弟よ。メロンをお食べ」
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