ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
これ以上、近寄られないようにこくこくっと首を縦に振った。
ふっと社長は笑って、部屋から出ていった。
な、なんだったんだー!
今のは。
色気ありすぎしゃない?
こ、怖っ。
男が女を誘惑するとか。
八木沢社長、奥深すぎる。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


家に帰ると、珍しく長男の圭吾(けいご)兄ちゃんが遊びに行かずに真面目に店番をしていた。

「ただいまー」

「有里っ!今朝、悪そうな男が迎えに来たって伊吹から聞いたんだか」

「悪そうな男はお前だよ」

母親からの冷静なツッコミが入った。
圭吾兄ちゃんの服装はグラサンにアロハシャツ、配達はスクーターに乗り、ビーチサンダル、髪の毛は金髪。
どこから、どうみても柄の悪いチンピラにしか見えない。

「母ちゃん!悪い虫が有里についたんじゃないか!?」

「お前が言うんじゃないよ。圭吾、あんたが店番していると営業妨害にしかならないんだよ!配達にいっといで!」
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