ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
秘書との駆け引き《社長視点》
―――夢を見ていた。
母がまだ生きていた頃、母と子一人だけで暮していた。
母は俺を育てるので必死で働いていて、物心ついた時から、熱を出してもアパートの狭い部屋で一人静かに眠るしかなかった。
誰もいない。
しんっとしていて、返事もなく、ただ自分の苦し気な息の音だけが響いていた。
寂しさに負けて、熱の残る体で外に出ようとしたら、誰かがそれを止めた。
「母さん?」
その手は熱のある体には冷たくて、心地よい。
誰だったのかは、わからないけれど、久しぶりに深く眠れた気がした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
目を覚ますと、なぜか、木村有里がいた。
何してんだ、こいつ。