ネトゲ女子は社長の求愛を拒む
「そうね。一臣さん。でもね、直真が一番嫌がることをしたほうが、いいわよ」

直真さんの指を這わせ、顔を近づけて言った。

「ねえ、直真。キスして?」

ぞっとするほど、冷たい目で女の人を睨んでいた。

「俺に命令するな」

「ふふっ。やっぱり駄目ね。命令されるの嫌うものね」

そう言って、口づけようとした瞬間―――思わず、足で椅子を蹴り、がんっとぶつけていた。

「きゃっ!」

「そういうの、見せられるの嫌いなんで。やめてもらえます?」

触られるのを見せつけられるのも正直、イラッとした。

「なにこの子」

「スマホ。没収しなくていいんですか?私、警察に電話しますよ」

ポケットからわざとスマホを落とし、床に置いて見せた。
一臣と呼ばれた人が慌てて、拾い上げた。

「そいつのも奪えよ!」

「そうね」

二人はにわかに慌て始めた。
こういうことには慣れてないみたいだった。
手際わるいなぁ……。
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