Present for you〜Gentleman side〜
僕の腕の中で、音羽が嬉しそうに言った。ああ、今この瞬間は夢じゃなくて現実なんだ……。そう思うと目の前がぼやけてしまう。

「おかえり!」

涙を拭い、僕は音羽に笑いかける。そして花束を手渡し、音羽のキャリーケースを受け取ってから空港を後にした。

オーストリアでの話を聞きたい、と僕が言ったのでカフェでお茶をすることが自然と決まる。音羽はメニュー表を見て「日本語のメニュー表だ〜!」と笑っていた。

「オーストリア、楽しかった?」

頼んだコーヒーとケーキを楽しみつつ、僕は訊ねる。音羽はコクリと頷き、スマホで撮った写真を見せながら話してくれた。

「オーストリアってね、とっても綺麗で素敵な観光地がたくさんあるの!豪華な宮殿を向こうでできた友達に案内してもらったり、おいしいトルテを食べたりしたよ。あと、冬はオペラハウスでよくオペラを見たわ」

和馬くんと一緒に今度は行きたいな、と音羽は頬を赤く染める。音羽の撮った写真に写るオーストリアは、観光地の一つ一つが豪華でお上品な雰囲気だ。きっと観光に行くってなったら緊張しそう……。
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