Present for you〜Gentleman side〜
ネクタイピン、して来てくれたんだね。嬉しい。

そう言って志帆は他の招待客のところへ行き、挨拶を始める。志帆の先程の言葉に俺はフリーズし、数秒後にぶわりと熱が込み上げて来て顔を覆った。

「……反則だろ!」

志帆はどういうつもりであの言葉を言ったんだ、と考えているうちに志帆の招待客に向けた話が終わり、招待客は酒や料理を楽しみ始める。高級ホテルを貸し切ってのパーティーだから、並んでいる料理も豪華なものだ。俺が一度も見たことのない料理もある。

「奏ちゃん、お肉好きでしょ?これおいしいよ」

どれを食べようか迷っていると、皿を持った志帆が教えてくれた。俺は「サンキュー!」と言って志帆の勧めてくれた肉料理を取り、壁際へと向かう。ついてこなくてもいいのに、志帆は俺の隣に立った。

「パーティーの主催者が壁際にいるっておかしくね?」

「奏ちゃんの隣が一番安心してご飯が食べれるの!」

「何だそれ」

どちらからともなく笑う。志帆のこういうところに俺は惹かれたんだ。金持ちとか、庶民とか、全然考えることなく接する志帆に、俺は恋に落ちたんだな……。
< 9 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop