ネモフィラ
学校のチャイムが鳴った。
さっきまでざわついていた教室も、「静かに」という先生の声で、みんなの視線が教壇に集まる。

「えー、今日は転校生を紹介します。あずま、自己紹介頼む。」

先生の呼びかけの後、私は頷き教壇に上がる。

「東 かなでです。今日からよろしくお願いします。」

「じゃあ、東の席、波部の横なー。1番後ろの窓際座ってくれ。」

先生に言われた通り、席についた。

「東!俺、波部 優史!よろしくな!」

隣の男の子に挨拶され、コクっと頷いた。

波部くんは、私の無愛想さに首を傾げたが特別気にした風もなく、1限目の授業が始まった。

チャイムが4限目の授業の終わりを知らせると、波部くんがお弁当を一緒に食べないかと誘ってくれた。

「友達作らんといけんやろ?」

「大丈夫、ありがとう。」

そう断って席を立った。

お弁当を持って1人になれるところを探して、廊下を歩いてると物置があった。
ドアは鍵がかかってるけど、空気の入れ替えをするための小さな扉は空いていた。

中に入ってカーテンを少し開けると陽の光が差し込んできて、部屋の埃っぽさがよく分かる。

自分で作ってきたお弁当を食べながら、フっとため息をついた。

1人の時間は安心できる、誰にも侵されたくない領域。
出来る限り、他人とは馴れ合わず、静かにこの高校生活を終わらせたい。
今は高校1年の6月、もう後1ヶ月も待たないうちに夏休み。
あぁ、はやく、早く。






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