彼は過去の彼に殺される
彼は死んだ。

彼の死体に外傷はなく、原因不明の突然死と言われた。

私が彼の遺品を整理していると、たくさんの手紙を見つけた。

彼は息子だけじゃなく、私にも手紙を残していた。

私はそれを大事に、少しずつ読み始めた。

手紙の中でも彼は愛をたくさん伝えていた。

幸せだと何度も伝えてくれていた。

最後の手紙にはこう書かれていた。

『この世界は不思議な世界だ。
未来に行って自分を殺すだなんて。
過去の自分が殺しにくるなんて。
時々全部夢だったんじゃないかと思う。

だけど君を救うことが出来た。
息子に会うことが出来た。
僕は幸せだ。

だけど一つだけ心残りがある。
君を幸せに出来なかった。

だから僕は願う。
こんな不思議な世界なのだから、きっと死後の世界もあるはずだと。

僕達はきっとまた会える。
君ともう一度会えた時に、君や息子の話をたくさんしてほしい。
だからなるべくゆっくり会いに来て欲しい。
僕はいつまでも待っているから。

そしたら、今度こそ2人で一緒に幸せになろう』

涙で手紙はグシャグシャになっていた。

だけどこれは悲しい涙じゃない。

彼は最後まで私を救ってくれた。

私はこれから彼の分も生きていく。

彼ともう一度会うために。

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