彼は過去の彼に殺される
息子は大きくなり、やがて成人し、恋人ができ、結婚した。
孫は3人。
曾孫は7人。
本当は存在しなかったはずの命だった。
彼が守った命だ。
そしてこれからも新たな命を宿していく。

私はたくさん生きた。
彼の分も。
再婚はしなかった。
彼を愛していたから。
彼に会いたくなったら手紙を読んだ。
彼にたくさん話が出来るようにと、私は生きた。

今はベッドから動けなくなった。
起きている時間も少なくなった。
だんだん目も開けられなくなった。

誰かが言った。
「もうすぐ旦那さんに会えますよ」

私の目から自然と涙が零れた。

私は深い眠りについた。






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