最後の恋だと、笑って下さい。
 あぁ、そうか。
 だからなのか。
 通りで、雰囲気が柔らかく、面倒見がいいと思った。
 それなら、納得だ。

 大家族を頭に思い描き、想像して、思わずくすりと笑う。
 何だか、すごく楽しそうだ。

 私にも母の違う弟や妹がいるけれど、ちゃんと会話したことなんて一度もなかったし。
 むしろ、一方的に蔑まれるだけだったから。
 すごく羨ましく思えてしまった。

 こんな素敵な長男のいる妹に産まれていたら、きっと幸せだったんだろうな。
 そう思って小さく息を吐いた。
 その時だった。

「ちょっと、兄上ー?
仕事放り投げて、一体どこ行ったんですかーっ!
父上が怒ってますよー!」

 少しだけ開いた扉から、元気のよい少年の声が届いてくる。
 それを聞いた瞬間、青年ははっとして腰を浮かせた。
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