最後の恋だと、笑って下さい。
「あっ、しまった……っ!
女の子助けるのに必死で、仕事忘れてた」

 青年は慌てて私を優しく床に下ろし、立ち上がる。
 そして、私を肩越しに振り返った。

「ごめんね、もうしばらく様子を見守ってあげたかったけど……。
私もここの殿に呼ばれて、仕事に来ていたものだったから。
いい?
もうしばらく、衣にくるまって大人しくしてるんだよ?」

 青年は私に言い諭して頭を撫で、慌てて部屋を出て行こうとする。
 そんな青年の背中を見ていた私は、思わず……。

「あ、あの……っ!」

 青年を呼び止めていた。

「あの……っ!
貴方の、名前を教えて下さい!」

「うん?
あぁ、そういえば、まだ名乗ってなかったね」

 青年は扉の前で立ち止まり、私を振り返る。
 そして、さっきよりもずっと優しい笑みを浮かべた。
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