confused me

-Day 11-

あれからどうやって帰ってきたのだろう。
いつの間にかあの布団の上に横になっていて、眠りについて、今起きた。

でも足枷も、あの扉の鍵も、何もついてなくて。


あの工藤という男が提示したのは、ふたつの条件。


まず、私が彼の家を出てからの衣食住は保証し、あのビルで働かせてくれること。

そして、戸籍をまたイチから作り直してくれること。


私がこの家から出なかった最大の理由は、彼しかいないから。

戸籍も消され、両親も消され。

きっとあの家だって今頃売られているはずだ。


帰る場所も、金もない。
なんなら、戸籍がないので、存在を認められていないも同然だ。


“自由とは、法の許す限りにおいて、行動する権利である。”


あの男はそう言った。モンテスキューの言葉だと。

でも私は、モンテスキューなんて信じない。


“法があるところに自由は存在しない。”


ジョン・ロック、統治二論の一文だ。
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