confused me
こんな人に会ったこともなければ、京極律なんて名前も初めて聞いた。

苗字だって、聞き馴染みがない。

律なんて知り合いも、全く知らない。
私と誰かを混同しているとしか思えない。


「...そんなわけないでしょ。なに、僕が変わりすぎてわからなくなっちゃった?」


可愛いなぁ、なんて言って私の頬を撫でる。
その感覚に、鳥肌が立った。


「優里のことは、何もかも覚えてるよ」


しかし、先程考えていた、私と誰かを間違えているという説は、一瞬で打ち砕かれる。


「あははっ、可愛い。...あ、そろそろ時間だ」


彼は腕時計を見てそう言う。
そして、枕元にあった水と薬を手に取った。


「ごめんね、僕これからお仕事で。ひとりじゃきっと寂しいだろうから、お薬飲んで寝ててくれる?」


私に薬を飲ませて、彼は部屋の電気を切る。

おやすみ、そう静かに言った。
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